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高専FAQ

――高専とは?

 高専(高等専門学校)とは、中学校を卒業した人が入れる5年制の学校で、だいたい各県に一つくらいあり、その大抵が国立の学校です。機械工学や電気工学などを学ぶ工業高専や、通信や電気関係を学ぶ電波高専、そして船に関することを学ぶ商船高専など、いくつかの種類があります。就学年数で言うと高校+短大と同じになり、卒業すると短大卒と同じく「準学士号」が与えられます。しかしながら、高校+短大と違う所は一貫教育である点です。その辺は高専の学生担当の先生とかが熱弁したりしますが、まぁ、実際問題、1年生から専門科目で実験やらなんやらやりますから、高校+短大とはまったく違い、それが高専の特徴でもあります。
 違うといえば、高校生は「生徒」で高専生は「学生」であることです、と高専の先生は言います。が、実際問題、何が違うんだかさっぱりわかりません。あえて違うと言えば、高専には校則はほとんど無く、どんな服を着ていっても、どんな髪型、色にしても特に問題無いというところです。まぁ、先生はなんやかや皮肉か何かを言ったりしますが、校則的には問題ありません。

――入学するには?

 高専は、中学校を卒業した人に対する教育機関ですので、日本の義務教育を終えた人ならだれでも入れます。試験に関しては、一般の高校の試験と同様に、国・数・理・社・英の5教科が課せられます。試験問題は私立などでは違いますが、国立高専ならば全国同一の高専入試問題を使います。内容は高校入試よりちょっとひねった問題だとか言われてたような気がしますが、なにしろ筆者が受験したのも昔の話。もう忘れてしまいました。見てみたい人は本屋さんで過去問題集を売ってますので、そこで見てみてください。

――歴史的には?

 高専の歴史は昭和36年の学校教育法の一部改正により設置された時に始まりました。その頃はちょうど高度経済成長期で企業の即戦力となる人材が欲しがられていた時代で、その要望に応える職業人を育成するべく、5年間一貫教育の高等教育機関として高等専門学校が誕生したわけです。
 そのためか、昔はなかなか高専卒業生が活躍したそうで、古参の高専の先生などは口をそろえて、「君らの先輩にあたる昔の高専生はすごかった」などと言い、「そのおかげで現在も高専の就職率は高い」などと言います。そして最後に、現在の高専生に嘆き、君らも頑張ってくれと言います。まぁ、現在は学力低下が叫ばれていますし、実際の所、カリキュラムがどんどん薄く、2年で教える内容が3年になったりしているようなので、ある意味当たりなのかもしれませんが。
 そんな華々しい(?)過去を持つ高専ですが、最近は企業のほうも大卒が当たり前、研究職なら大学院生で、という具合になってきていますから、なかなか高専からの就職も厳しくなっており、また、国立学校の独立行政法人化もあって、その存在意義が問われているのが現状です。

――高専での教育システム

 高専でのカリキュラムは、高学年になるほど専門科目が増えていくという、「クサビ型教育」と呼ばれるものです。1〜3年生の間は高校生と同じなのかと思っている人も多いかもしれませんが、大きく違います。
 まず、家庭科が存在しません(少なくとも宮城高専には)。数学、物理、化学等の理系科目は普通にありますが、その他の科目に関してはかなり疎かです。特にうちの高専(の私の代)に関しては、世界史は読書会、地理は地図帳で地名探しなどと、かなりいい加減でした。これは大学受験が無いからで、先生の趣味で授業してみても高校並に授業してみても、学生にとっては何も変わらないためでしょう。国語の授業なども、先生の趣味でいつも漢文ばっかりだった記憶があります。まぁ、良いか悪いかは別として、大学受験用詰め込み教育の逆さまはこういう教育なのかもしれません(ウソ)。また、こういう教育は逆に言えば、高専を3年で退学して大学を普通に受験する(3年終了で高卒の資格はもらえるので、そういうことも一応出来ます)には高専の授業ではかなり不十分で、自分で勉強しないと無理ということも示しています。
 こう書いてみると変な学校ですが、専門科目が1年生から学べるというのは、やはり一番の特徴でしょう。機械科などでは工作実習で、旋盤、フライス盤、溶接、鋳造、鍛造など、一通りの機械工作をします。電気科は回路実験、建築科は測量なんかやってるのを見たことがあります。机に座ってやる授業ばかりではないというのも、高専の特徴の一つです。そのため、進学した大学などで「高専生は知識が豊富」などと言われたりします。しかしながら、このような特殊カリキュラムと、センター試験を経験しないという二つの理由からか、一般の大学生と比べると、専門科目に関しては強いですが、基礎科目や英語が貧弱という状態になったりします。

――高専から進路は?

 上でも述べましたが、高専は企業の即戦力を育成するための学校でしたので、以前は大半の学生が就職していました。しかし、近年は高学歴化が進み、高専卒では企業への就職が難しくなっており、また、さらに勉強したいという学生も増えたため、大学への編入学制度というものが出来ました。編入学とは、高専を卒業した後に大学の3年次(または2年次)に入学できる制度です。近年は大抵の国立大学で実施していて、その制度で大学に進む人も増えました。また、高専の中にも「専攻科」という2年間の科を設けている所もあり、そこに進学して大卒並の資格(学士)を得ることもできます。
 もちろん、企業への就職という道もまだまだあります。「歴史」の項でも述べましたが、昔から即戦力となる人材を輩出してきただけに、求人はまぁ結構来ます(一応)。そのため、大半の学生は就職が決まり、学校側は就職率100%という数字を内外に示すことができます(一応)。ただ、高専卒で就職はできるのですが、大卒に比べて給料が安いなど、就職してからの苦労もあるみたいなので、最近は大学まで進んでから就職する人も増えてきました。

――専攻科とは?

 高専5年終了しての進学に関して、高専内部でも高専5年間にあと2年付け加えて大学並の人材を育成しようということで、「専攻科」というものが誕生しました。専攻科とは、高専本科卒業生がさらに2年学び、学士号を取得できる(専攻科単体では取得できないが)システムです。利点は、今までの研究をつづけられることや、引越しなどの手間が無い事、学費が高専並なので、大学に比べて安い(半額くらい?)などです(全部指導教官の受け売りじゃないか!)。ただ、同じ学校に7年も通うわけで、飽きが来るというのも悩みです。私の先輩にはまじめに学校に行っていたにも拘わらず、とある事情(落第ではない)で8年も行った人も居ますけど(^^; また、専攻科を卒業して、さらに大学院へ進学という道も開かれています。
専攻科案内

――二専門って?

 「二専門履修コース」とは宮城高専に専攻科が設置される前に存在していた制度で、ある学科を終了した後に違う学科の4年生に編入し、広い知識を身につけようとするシステムです。例えば、電気工学科を卒業した後に機械工学科4年生に進むといった感じです。5年終わった後に2年追加ですから、年数的には大卒と同等、専攻科卒と同等ですが、学位は準学士のままなのが欠点で、この制度は専攻科の設置と共に無くなりました。(そのあおりで8年行った人が...(^^; まぁ、8年の道を自ら選んだらしいですが)

――大学編入学制度とは?

 最近は高学歴化が進み、高専から大学に進学する人が多いということは先ほども述べましたが、そのための制度が編入学制度です。高専から大学を受験するには次の二通りの進みかたが有ります。
  1. 高専5年卒業後、編入学制度によって大学進学する。
  2. 高専を3年で中退し、普通に大学進学をする。
 1.は高専生にとっては普通の道で、大抵の高専生にとってこれが最良の道であると言えます。なぜならば、「教育システム」の項で述べたような、高校との授業の違いから、高専生が普通に大学受験をするのは困難だからです。もちろん、「高専に入ってみたものの、やっぱり違う道(文系とか)が良い」という人にとっては3年で中退して大学に進学するのも困難ですが有効な手です。しかしながら、大抵の人は工学をやるためにわざわざ高専に入ってきたのですから、進学に関しても工学系の道に進むことになるでしょう。その時にどちらが有利(この言葉は慎重に扱わなければなりませんが)かと言えば、やはり1.のコースでしょう。
 それというのも、編入学試験は、
  1. 受験科目が少ない
  2. 国立大学を複数受験できる
 という有利な点があるからです。(高校生から見ると反感を買いそうですが...)
 1.の受験科目が少ないという点は、一番多い旧帝大系大学でも5教科(数、物、化、英、専 (たしか))程度ですし、ある大学では、推薦ならば雑談程度の面接でOK(○○先生元気?とか。(!))というところもあります。また、2.の点もなかなか美味しい話で、普通の国立大学入試とは違って、大学によって受験日が区々なために、複数の大学を受験する事が出来ます。が、旧帝大だけはなぜかすべて受験日を同じにしているので(たしか)旧帝大どうしの併願はできません。
 まぁ、編入学はおいしい話のように聞こえますが、一つ欠点があり、在学期間が2年のため、いわゆる「大学生活」が短いというのが欠点です。

――技科大とは?

 高専から大学に進学できるということは先ほど述べましたが、高専生のための大学というものも存在します。それがこの技術科学大学(技科大)です。
 技術科学大学は豊橋技術科学大学(愛知県)と長岡技術科学大学(新潟県)の二ヶ所に存在します。この大学は高校卒業生が普通に入学する事もできますが、入学定員の大半は高専生を受け入れるための3年次編入組に割り当てられているため、高専生のための大学と言えます。また、基本的に全員が大学院まで進む事になっているそうです。ただ、右を向いても左を向いても高専出身者ばかりなので、心機一転、“大学”の雰囲気を味わいたい!という人にはオススメできないかもしれません。(笑)
 そういえば大学ロボコン、技科大が毎年強いですが、やっぱり高専生の強みでしょうか?

――高専ロボコンについて

http://www.nep21.co.jp/robocon/
 高専の話で外すわけには行かないのが「ロボットコンテスト(ロボコン・ROBOCON)」でしょう。ロボコンをやるために高専に入学するという人もかなりいると聞きます。
 ロボコンとは、ご存知の方も多いでしょうが、あるテーマ(ゲーム)に沿ってロボットを製作し、対戦させるという大会です。テーマとは、ロボットで行うゲームのことで、例えば、ボールをゴールに入れるとか、箱を高く積み上げるとかするゲームです。このテーマ、大会が始まった当初はシンプルでわかりやすいルールでしたが、最近はネタが尽きてきたらしく、細かく複雑になってきて大会当事者もよくわかっていないということが多々あったりして、判定に関して揉めたりすることも最近は多いです。
 ロボコンは毎年秋に開かれますが、テーマが決まってNHKから通知が来るのが大体、春〜初夏くらいです。そこから、ロボットの案を出し、設計を行い、実際に製作します。製作に用いるのはもちろん実習工場の機械群です。また、近年は制御のほうも充実してきており、電気(電子)回路の設計および製作も重要な仕事の一つとなっています。そのため、工作機械が扱える機械科の人や電気回路に詳しい電気科の人が主戦力になるのかなぁと考えがちですが、実際、建築科の人や材料科の人がやってたりしますので、別に学科には関係なく参加できます。
 ロボコンのテーマはNHKから届くんですが、その時に会場の設計図(というか設営図)とロボットの仕様制限(寸法とか重量)、そして予算の限度が知らされます。この予算は数万円程度(今年は十万円)なんですが、実際に出場してくるマシンを見てみると、「どう考えてもその予算でその部品は買えないだろ?」という装備のマシンが多々あります。例えば、レーザー光を用いた位置決め装置とか、制御用のプロセッサ、特殊素材を用いた部品など、数え上げたらキリがありません。なんでも、知名度を上げて学生を呼び込むために学校ぐるみで力を入れている高専も多いらしく、特別予算をつぎ込んでいる所もあるみたいです。また、マシンを構成する部品も前年の使いまわし(特に汎用的な部品や回路)を使用する場合も多々ありますから、正確な費用の算出は難しく、費用の制限はあくまで形だけ、名目上だけと言っても過言ではありません。
 とまぁ、ちょっと裏話みたいになりましたが、全国大会の模様はNHKで放映されますし、各地方大会も深夜にやってたりするので、この話を思い出しながら見てみると面白いかもしれません。また、会場設計図や競技ルール、仕様制限などの資料はロボコンホームページhttp://www.nep21.co.jp/robocon/に載っていますので、参考にするのも良いでしょう。
 そういえば、昔から噂のあった「NECは景気が悪いから協賛を辞める」という話は、本当になりましたね。代わりにHONDAが協賛になったみたいです。

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